先日、サウナに行ったんですが、そこで流れてたテレビで偶然あるお店を見つけ、ちょっと調べてみるとめちゃくちゃ面白かったので記録しておこうと思います。
最初、これ「メルマガのネタにしてサラッと書こうかなー」程度にしか思ってなかったんですが、深掘りするとビジネス的にも参考になる部分がたくさんあったのでぜひ最後まで読んでみてください。
まず、最初にネタばらし。お店はこちら。
だし巻き玉子専門店「百花」さん。
そういや、玉子と卵の違いって知ってます?
僕の認識では
卵は「割る前のたまご」玉子は「割った後のたまご」
なんですが、これって合ってる?
まあ、いいや。
で、お店のインスタ見てみると、テレビとかSNSの取材とかいっぱい来てるみたいで、もしかしたら「あ、見たことある!」って人もいるかもしれませんね。
シンプルに「え?だし巻き玉子専門店?なにそれ、オモロ」って感じで飛びついてる人が多いんだと思うんですが、このお店が面白いのは元々カフェだったってことなんですよね。そして、さらに面白いのは店主が和食料理人ってこと。
インスタにはだし巻き玉子専門店としてリニューアルする前の頃の投稿も残っているんですが、当時出していたメニューなんかを見ても一つ一つのメニューへのこだわりはすごい感じでした。
ただ、全然お客さんは入らず、「もう店を畳まないといけないかな」と覚悟していたところに店主の娘さんからの鶴の一声が……
「もういっそのこと、だし巻き玉子だけだせばいいじゃん」と。
というのも、カフェ時代からいろいろなメニューを出していたものの、そのなかで人気メニューが「だし巻き玉子」だったみたいなんですね。
で、ダメ元で振り切ったところ……
面白がって集まったインフルエンサーの投稿がインフルエンサーを呼ぶ形でどんどん広がり、いつしかバズの連鎖が始まったみたいです。
今では前日の夕方から仕込みを始め、昼過ぎまで営業。また次の日の準備へ……という感じで、メディアの取材もひっきりなしって感じでしたが、それでもお店はパンパン。今では売れてない時代が想像もできないほどの人気店になったわけです。
お店の看板メニューはこんな感じ。

こちら大人気の「だし巻き玉子重」ですが、ご飯の上に大迫力のだし巻き玉子。そして、小鉢、みそ汁、自家製漬物。そして、選べるトッピングにお茶漬け用のだし。トッピングは「チーズ」「明太子」「ねぎ」「鶏そぼろ」「納豆」「昆布」「なめ茸」「きざみのり」から3種類を選ぶというなんともワクワクするシステム。
うわ~、行ってみてぇ~
ってなったところで、なぜここまでのV字回復が可能だったのかってを「ただのラッキーパンチでしょ」で終わらせるのはもったいないと思ったんです。
ということで、
お店の1日に密着した興味深い動画があったので視聴したうえで以下にポイントをまとめておきます。
・仕込みは夜から
・週末は100本分
・だしは営業の合間に合わせる
・たまご割りまくる(200個以上)
・割ったらブレンダーで混ぜる(なめらかに)
→カフェ時代にパンケーキ作ってたやつ
・トッピングの仕込みは妻娘
・小鉢へのこだわりすごい
・営業中はひたすらだし巻きを巻くのみ
まあ、あくまでこの記事を書くにあたってのメモなので、ぜひ動画を観てみてください。
で、僕なりに考えてみた結果、このお店のヒットには5つのポイントがありました。
・カフェがうまくいってなかった
・頭がやわらかい店主だった
・元からこだわりが強かった
・絞ることで集中できた
・SNSにあげたくなる要素が揃っていた
まず、前提として「カフェが潰れかけていた」ってのがあります。
仮にカフェがそれなりにうまくいっていたら、わざわざリスクをとってチャレンジしなかったかもしれません。背水の陣。
後先なくなった状況で「やるしかない」と少々極端な振り切り方ができたのが良かったのかなと。
だからといって、娘さんの提案を素直に受け入れられる店主の頭がすっげーやわらかいのも大切なポイント。
もちろん葛藤はあったと思いますが、そこで頑なに”要らぬこだわり”を貫いていたら今の大ヒットはなかったわけです。やっぱり時代は「変化」ですね。
「柔軟」つながりでいうと、カフェ時代に使っていたブレンダーを卵の撹拌に応用したおかげでなめらかふわふわな食感が生まれたってのも面白いですよね。
店主は和食や割烹料理の経験もあるとのことでしたが、その道に進んでいたらこの「だし巻き玉子専門店」の発想は生まれなかったかもしれません。
おそらく「だし巻き玉子が美味しいお店」なんていくらでもあるじゃないですか。ワンチャン、その辺の居酒屋でも美味しいですよ。ただ、だからといって「あ、じゃあ、うちはだし巻き玉子一本でいきます」とはならないでしょ、普通。
ただ、上の動画で店主が仕込みをしている様子を見ていると、小鉢一つに至るまで本当にこだわりがすごいのがわかりました。元からすっごくこだわるタイプなのかなと。だからこそ、だし巻き玉子一本でも勝負できるクオリティを出せたんだろうと思います。これがその辺の居酒屋店長が思い付きで始めたものだったらこうはならなかったでしょうね。
カフェ時代はパンケーキまでやっていたとのことでしたが、本当に多彩なメニューを出していた様子。今ではお店のコンセプトを「だし巻き玉子」に特化させ、提供メニューも思いっきり絞り込まれました。これにより、仕込みや調理のリソースをそこ(だし巻き玉子)だけに全力投球できるようになったのも良かったポイントですね。オペレーションがシンプルになるし、それにより一つ一つのメニューの質を高める余裕も出てきますもんね。
そして、最後に忘れてはいけないのがSNSマーケティングにうまく乗れたこと。話を聞くと、どうやら狙ってやった感じではなかったんですが、要は「SNSにあげたい」「周りにドヤりたい」っていう人間心理をうまくくすぐったのがバズを生む結果になりました。
この「SNSに投稿したくなる要素」っていうのを分析してみると、パッと浮かんだのは「美しさ」「意外さ」「おいしさ」の3つ。
インスタやYouTubeにはぷるぷるのだし巻き玉子の動画がたくさん並んでいます。メインのだし巻き玉子はもちろんですが、小鉢や薬味の一つ一つが本当にキレイで「写真映え・SNS映え」してるんですよね。これは「行ってきたよ」ってアップしたくなるわな、と。
それとやっぱり「だし巻き玉子専門店」ってのは強いですよね。「カフェのだし巻き玉子が美味しかった」ってよりも「だし巻き玉子の専門店に行ってきた」の方がなんか印象としては強いわけですから。
で、実際「味も言うことなし」となれば、まあシェアしますよね。「カルロスさん、なんでこんなお店知ってんのー!」って思われたいですからね。
そして、そんな数々の「点」が一本の「線」となり、SNS上で拡散されるうちにいつしか「面」になり、大ヒットを生んだわけです。
最初は「ある飲食店の逆転成功事例」くらいにしか考えてなかったんですが、これって別に飲食業に限らず大切なことが詰まっていますよね。
で、この記事もね、実際にお店に行って「こないだ”だし巻き玉子専門店”に行ってきたんですが、ここ面白くてね…」っていう入りで書けたら超理想的だったんですが、とりあえず忘れる前に書き上げてしまいました。
いつか、お店に行って食べたら写真とか追記しますね。
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